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京都地方裁判所 昭和59年(行ウ)6号 判決

原告 仁木義弘

被告 木田喜治

主文

一  被告は井手町に対し、金一四一万〇七九九円を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一申立

一  原告

1  被告は井手町に対し、金一四二万二九七二円を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言。

二  被告

1(本案前の申立)

本件訴えを却下する。

2(本案の申立)

原告の請求を棄却する。

3 訴訟費用は原告の負担とする。

4 仮執行免脱宣言。

第二主張

一  原告の請求原因

1  原告は井手町の町民であり、被告は昭和四八年二月以降井手町の町長である。

2  被告は井手町長として昭和五五年四月一日上田君子との間で、井手町が上田君子に対し、別紙物件目録一記載の土地(以下、本件土地という)を、代金一一九四万二七七七円、代金支払期日右同日の約で売渡す契約をした。

3  被告は井手町長として、上田君子の願出により、昭和五五年四月八日、同人の本件土地売買代金債務の履行期限を、その約半額につき昭和五六年三月三一日まで、残額につき昭和五八年三月三一日まで延期し、延納利息を免除し、更に昭和五八年三月三〇日には本件土地売買代金のうち残額の履行期限を昭和五八年一二月二八日まで延期し、延納利息を免除した。

4  上田君子は井手町に対し、本件土地売買代金を、昭和五六年三月三〇日に五二六万〇七八一円、昭和五八年九月二一日に六六八万一九九六円を支払つた。なお、井手町は昭和五八年一〇月四日上田君子に対し、本件土地について所有権移転登記手続をした。

5  被告が右3のとおり行つた履行期限延長は違法である。

履行期限延長については、地方自治法施行令一六九条の三の規定の適用があるところ、被告の履行期限延長は同条の定める要件を欠いている。

履行期限延長について同条の適用がなく、同令一七一条の六の規定の適用があるとしても、同条一項二号にいう「債務者が当該債務の全部を一度に履行することが困難」な場合に該当しない。特に、上田君子は井手町に別紙物件目録二、三記載の土地(以下、一九番七、八の土地という)を売却して、その代金を受領することができたからである。被告としては、本件土地売却代金債権と一九番七、八の土地買受代金とを相殺することができた筈である。

6  被告が履行期限延長をするにしても、延納利息を付さなかつたのは違法である。

井手町は本件土地を代金完納以前に引渡し、上田君子がこれを利用しており、井手町においてはこれを利用していなかつたのであるから、履行期限延長をするとしても、延納利息を付するべきである。

7  被告は、違法に、右3の履行期限延長をするについて、故意又は過失があつた。

8  被告が、右のとおり、違法にも、延納利息を付することなく、履行期限延長をしたために、井手町は、本件土地売買代金に対し、本来の弁済期の昭和五五年四月一日より右4の弁済までの期間につき、少なくとも年五パーセントの割合による額に当る一四二万二九七二円の損害を受けた。

9  原告は、昭和五九年一月二三日、被告の右行為について監査請求をしたが、監査委員は昭和五九年三月二三日に原告に対し監査請求は理由がない旨を通知した。

よつて、原告は、地方自治法二四二条の二第一項四号により、井手町に代位して、被告に対し、井手町に、損害賠償金一四二万二九七二円の支払を求める。

二  被告の認否と主張

1  原告の主張する被告の責任は、地方自治法二四三条の二の賠償命令の手続によつてのみ追求されるべきものであるから、本件訴えは不適法である。

2  原告の請求原因1ないし4の事実は認める。

3  原告の請求原因5ないし8の主張は争う。

4  被告がした履行期限延長は、地方自治法施行令一七一条の六第一項二号により適法である。上田君子は、本件土地売買代金全額を一括して支払うことのできない状況にあつたが、同人は土地等の資産を所有しており、履行期限を延長すれば、完済できる見込があつたからである。

5  被告が履行期限延長に際して延納利息を付さなかつたことは、次の事情の下では、井手町財務規則一四五条四項ただし書により、町長の裁量の範囲に属する適法なものであつた。

(一) 本件売買は、かつて井手町が上田君子に売渡していた一九番七、八の土地を井手町の都合により再買収する必要が生じたのに伴い、その代替地提供のために行われたものであつて、町の都合による契約であるが、上田君子は右契約に反対していた。

(二) 井手町は代金完済まで本件土地の引渡、所有権移転登記をしていない。

第三証拠〈省略〉

理由

一  訴えの適法性

原告が井手町の住民であり、主張のとおり住民監査手続を経たことは当事者間に争いがない。

原告主張の被告の責任について地方自治法二四三条の二の規定の適用があるとしても、被告の責任は同条に定める賠償命令制度によつてしか追求できないものではないから、被告の本案前の抗弁は理由がない(最高裁昭和五八年(行ツ)第一三二号同六一年二月二七日第一小法廷判決)。

二  本件土地売買についての事実関係

次のうち、1、4、11、17、18の事実は当事者間に争いがない。その余の事実は、成立に争いのない甲一ないし四号証、八ないし一三号証、一五号証、二一ないし二三号証の各一、二、乙三号証、及び八号証、証人中西正一の証言及び弁論の全趣旨により成立の認められる乙一、二号証、四ないし七号証、及び九号証、証人中西正一の証言、原告本人尋問の結果、並びに弁論の全趣旨により認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。

1  被告は、昭和四八年二月以降、京都府綴喜郡井手町の町長の地位にある。

2  井手町は、同町大字井手小字段の下一九番六に設置している井手診療所の患者用駐車場とするため、隣接の一九番七、八の土地を取得したいと考えて、所有者の上田君子と交渉した。上田君子は、当初は右土地を井手町に売渡すことに強く反対していたが、井手町において代替地を売渡すことを条件とするなどして辛抱強く説得、交渉した結果、上田君子は、一九番七、八の土地二三一・三九平方メートルを売渡すかわりに、近隣の本件土地三九六・七七平方メートルの売渡を受けることに同意して後記3、4のとおり二つの契約をするに至つた。

3  被告は井手町長として、昭和五五年三月二六日上田君子との間で、井手町が上田君子から一九番七、八の土地を、代金八七九万二八二〇円で買受ける契約をした。同じ契約書をもつて、城南土地開発公社は右同日、井手町の右代金債務を引受けてこれを支払う旨を約した。

4  被告は井手町長として、昭和五五年四月一日上田君子との間で、井手町が上田君子に対し、本件土地を、代金一一九四万二七七七円、代金支払期日右同日の約で売渡す契約をした。(以下、この契約を本件契約という。)

5  右4の契約において、(一)上田君子は契約締結と同時に、井手町に対し、その発行する納入通知書により、売買代金を支払わねばならず(契約書三条)、(二)売買土地の所有権は、代金支払時に上田君子に移転し、その時点で本件土地の引渡があつたものとし(四条)、(三)上田君子は、右代金支払後に、売買土地について所有権移転登記を請求することができ、この請求があつたときは、井手町は遅滞なく所有権移転登記手続をする(五条)ものとされていた。

6  井手町は、右4の契約当日、上田君子に対し、売買代金の納入通知書を交付した。

7  井手町は、本件契約日以降、本件土地を利用しておらず、また利用する必要もなく、本件土地を引渡さないことによる利益はなかつた。井手町は、本件契約後、いつでも上田君子に対し、本件土地の引渡、所有権移転登記手続をすることのできる状態にあつた。

8  城南土地開発公社は、昭和五五年四月二日上田君子に対し、右3の代金八七九万二八二〇円を、同公社同日振出の持参人払小切手で支払つた。

9  上田君子は、右3、4のとおり契約をしたものの、一九番七、八の土地の売却は井手町の強い希望によつて契約をしたものであるから、本件土地の買受代金の分納ぐらいは認めてくれても良いではないかと強く申出た。

井手町においては検討のうえ上田君子の希望に応じることができると判断した。

10  上田君子は昭和五五年四月八日井手町に対し、本件土地売買代金の支払については、「主人の仕事で、資金の計画がどうしてもたちません」との理由で、その半額を昭和五六年三月三一日迄、残額を昭和五八年三月三一日迄履行期限を延長してくれるように願出た。

11  被告は井手町長として昭和五五年四月八日右願出にもとづき、約半額を昭和五六年三月三一日迄、残額を昭和五八年三月三一日迄、履行期限の延長を認め、延納利息は免除する旨を決定した。

12  被告は井手町長として、昭和五五年一二月五日上田君子との間で、井手町が上田君子に対し、別紙物件目録四記載の土地(以下、これを一七番三の土地という)を、代金三五三万二〇三九円で売渡す契約をした。

13  上田君子は、井手町に対し、本件土地買受代金のうち五二六万〇七八一円及び一七番三の土地の買受代金三五三万二〇三九円を支払うため、右8のとおり城南土地開発公社より交付を受けていた額面八七九万二八二〇円の小切手を交付し、井手町は昭和五六年三月三〇日これを取立てた。

14  右五二六万〇七八一円の支払は、右11の履行期限延長により昭和五六年三月三一日迄に支払われるべき「約半額」の分であつた。被告はこれにより右約半額分については履行があつたものとした。

15  上田君子は、右代金一部支払後、代金完済前に、本件土地に土を入れて埋立てを始めた。井手町は、このことを知つてはいたが、昭和五八年六月ころまではこれに対して積極的には異議を述べなかつた。

16  上田君子は昭和五八年三月三〇日井手町に対し、本件土地売買代金残額について、「どうしても精算できない経済的な理由がございます」との理由で、昭和五八年一二月二八日迄履行期限を延長してくれるように願出た。

17  被告は井手町長として昭和五八年三月三〇日右願出にもとづき、昭和五八年一二月二八日迄履行期限の延長を認め、延納利息は免除する旨を決定して、その旨を上田君子に通知させた。

18  上田君子は昭和五八年九月二一日井手町に対し、本件売買代金残六六八万一九九六円を支払い、井手町は同年一〇月四日上田君子に対し本件土地について所有権移転登記手続をした。

三  履行期限延長の違法性

本件契約の内容は前記二4のとおりであつて、これによると、上田君子の代金債務の履行期は契約時であり、井手町の登記手続債務よりも先履行とされているから、本件契約は、公有財産の処分代金の納付について規定する地方自治法施行令一六九条の三にも合致し、違法とするところはない。

既に発生した公有財産売却代金債権の履行期限延長の特約については、地方自治法二四〇条三項、同法施行令一七一条の六に定めるところであるから、本件の履行期限延長の特約が右法条に照らして適法であるかどうかを判断する。なお、原告の援用する同令一六九条の三は、公有財産譲渡の契約の規制に関する規定であつて、既に発生した債権の履行期限の延長に関する規定ではない。

被告は、前記二11、17の履行期限延長については、同令一七一条の六第一項二号の要件が充されていると主張し、同号は、「債務者が当該債務の全部を一時に履行することが困難であり、かつ、その現に有する資産の状況により、履行期限を延長することが徴収上有利であると認められるとき。」と規定している。

しかしながら、上田君子は、前記二3、8のとおり、井手町に一九番七、八の土地を売却して、昭和五五年四月二日に代金八七九万二八二〇円を小切手で受領し、この小切手は第一回履行期限延長の時点でも所持していたと解されるから、上田君子は本件売買代金のうち右額については、第一回履行期限延長の時点で、代金支払が極めて容易であつたことは明白である。

第一回の履行期限延長のうちその余の額に関する部分、第二回の履行期限延長の全額についても、各履行期限延長の時点において、上田君子が、本件売買代金「債務全部を一時に履行することが困難であり、かつ、その現に有する資産の状況により、履行期限を延長することが徴収上有利であ」つたと認めるに足る証拠はない。むしろ、上田君子が、昭和五五年四月一日に本件土地を買受ける契約を、昭和五五年一二月五日には一七番三の土地を買受ける契約をしていることは、各契約の時点では、井手町も上田君子も各代金の支払が可能であると考えていたものと推測されること、前記甲九号証、一二号証によれば、上田君子は昭和五三年一二月以降、同町大字井手小字段ノ下一九番一及び一九番九の宅地計四七六・六一平方メートルを所有していたが、右土地は一九番八の土地と隣接した位置に存し(もと一筆の土地)ており、右一九番一、九の土地は一九番八の土地と時価(一平方メートル当り三万八〇〇〇円、前記二3参照)に差がなく、合計一八〇〇万円余の価値があるところ、右一九番九の土地には昭和五五年一二月に井手町のため二八九万五七九〇円の貸金債権を被担保債権とする抵当権が、右一九番一の土地には昭和五七年九月に井手町のため五三六万二二〇五円の貸金債権を被担保債権とする抵当権が、各設定されたほかは何の制限物権の設定もなかつたことが認められる(被告も上田君子が土地等の資産を所有していたことは自認している)から、右一九番一、九の土地を担保として本件売買代金のうち右八七九万二八二〇円を除く部分を借入れて井手町に支払うことが容易であつたと解されることからすると、上田君子において、本件売買代金を支払うことが、履行期限延長の昭和五五年四月八日、昭和五八年三月三〇日の時点で困難であつたと解することはできない。

そのほか、本件売買代金の履行期限延長について、地方自治法施行令一七一条の六の要件が充たされているとの主張立証は存しないから、被告のした前記二11、17の履行期限延長は同条に違反する違法なものというほかはない。

四  延納利息免除の違法性

地方自治法施行令一六九条の三第二項は、地方公共団体の普通財産を譲渡する場合に延納を認めるには代金に利息を付すべきものとしていること、同令一七一条の六第二項は、地方公共団体の債権につき延納を認める際にも、既発生の遅延損害金は徴収すべきものとしていること、同令一七一条の七は、履行延期をした債権とその遅延損害金の免除をするには、債務者が無資力又はそれに近い状態にあり、かつ弁済できる見込がないと認められる場合に限るとしていること、地方自治法九六条一項九号は、債権の放棄には原則として議会の議決が必要としていること、などに照らすと、地方公共団体の長が、延納利息の支払いを条件とすることなく、売却代金の履行期限延長を認めることは、売却代金納付までの間に、地方公共団体が売却物件を利用することにより、代金に対する利息相当額の利益を得られるため、延納利息を付することなく延納を認めても、地方公共団体の側に延納による不利益が存しない場合、債務者が無資力又はそれに近い状態にあり、延納利息を支払うことのできる見込がないと認められる場合、延納利息免除が元金回収のために止むをえない場合など、特別の事情のある場合に限られると解される。

本件においては、前記認定のとおり、井手町は、本件契約以降、本件土地を利用しておらず、また利用する必要もなく、現に上田君子が代金完納前にこの埋立を行つているものであり、井手町は本件土地の引渡、移転登記手続をいつでもできる状況にあつたのであるから、本件土地の引渡、登記が遅れることによる利用等の利益はなく、むしろ、引渡、移転登記まで本件土地を管理せねばならぬ負担があつたものと解される。

上田君子には前記のとおり資産があり、代金、延納利息を支払うことのできる見込があつたものと解されるし、利息免除が元金回収のために止むをえなかつたとか、その他利息を付さずに延納を認めるべき特別の事情があつたとは本件全証拠によつても認められない。

なお、井手町財務規則(昭和四五年三月六日規則第一四号)が別紙井手町財務規則のとおり定めていることは、成立に争いのない乙八号証により明らかである。しかしながら、同規則一四五条四項ただし書により延納利息の「条件を付することが適当でないと認められるとき」とは、前掲のとおり解すべきものであつて、地方自治法、同法施行令(特に前記引用の法条)に照らすと、財務に関する右規則の定めが、被告のいうように全くの裁量措置と解することはできない。

被告は、事実欄申立二5のとおり、(一)本件契約は、町の都合により一九番七、八の土地を上田君子から買収する必要が生じたのに伴い、その代替地提供のために行われたもので、町の都合によるもので、上田君子はこれら売買に反対していたこと、(二)町は代金完納まで、本件土地の所有権移転登記及び引渡をしていないこと、を挙げて、被告が、延納利息を付すことなく履行延期を認めたことが相当であると主張している。

しかしながら、前記二2のとおりの事情があつたにしても、上田君子において承諾して有効に契約が成立した以上、上田君子も契約に拘束されるのであるから、そのことは財政に関する法規上、上田君子に延納利息を付さずに履行延期を認める正当の理由となるものではない。また、井手町の側に前示のとおり本件土地の登記手続、引渡をしていないことによる利用利益が存しない以上、そのことは延納利息を付さない正当の理由となるものではない。

以上のとおり、被告が、上田君子に対し、本件売買代金債務について履行期限延長を認めるについて、延納利息を付することを条件としなかつたことも、違法と言わなければならない。

五  被告の責任

被告は井手町長として、自ら、前記二11、17のとおり、延納利息を付させることなく履行期限延長を認めたものである。

被告は、右の際、自らかつてなした前記二3、4、12の土地売買契約の事実を知つていた筈であり、その他前記の違法性判断の基礎とした事実は、その事実の性質上、井手町長である被告としては、現に知つていたか、少なくとも極めて容易に知ることのできたものと解することができる。

そして、履行延期の特約については、地方自治法施行令一七一条の六には、明文の規定があり、財政に関する法規については厳格な遵守が要求されていることを考慮すると、被告が違法に、本件土地売買代金につき履行期限延長の特約を、しかも延納利息を付さずに、認めたことについては、少なくとも重大な過失があつたというべきである。

六  損害

被告の違法な履行期限延長がなかつたとすると、上田君子が代金の支払を怠つた場合は井手町は年五パーセントの割合の遅延金を徴収することができ、上田君子が代金を納付したときは少なくとも年五パーセントの割合の運用益を挙げることのできたことは当裁判所に顕著であり、また井手町財務規則一四五条五項は延納利息を日歩二銭四厘としているから、井手町はいずれにせよ、被告の違法な履行期限延長により、代金額につき、履行期限延長の日より代金支払まで年五パーセントの割合による金員相当額の損害を受けたものというべきである。

なお、被告の履行期限延長は地方自治法一七一条の六に違反するものではあるが、同条は地方公共団体の長を拘束するにすぎず、履行期限延長の効力を定めた規定ではないと解されるから、同条は被告の履行期限延長により井手町が損害を受けたものと解する妨げとなるものではない。

井手町の受けた損害は、代金五二六万〇七八一円に対しては履行期限延長の日の翌日の昭和五五年四月九日から支払の昭和五六年三月三〇日迄三五六日につき年五パーセントの割合による二五万六五五三円、代金六八八万一九九六円に対しては履行期限延長の日の翌日の昭和五五年四月九日から支払の昭和五八年九月二一日まで三年一六六日につき年五パーセントの割合による一一五万四二四六円、計一四一万〇七九九円となる。

第一回履行期限延長の日迄の期間については、上田君子は代金支払遅滞による損害金を井手町に対して負うものと解されるが被告がこれを免除するとかその他の行為をして井手町に損害を与えたとの主張、立証はないから、この期間分については、原告の請求は理由がない。

七  結論

以上判断のとおり、原告の代位請求は、一四一万〇七九九円の範囲に限り正当であるから、この部分は認容してその余を棄却し、訴訟費用は行訴法七条、民訴法九二条ただし書により被告の負担とし、仮執行の宣言は不相当であるからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判官 井関正裕 武田多喜子 長久保尚善)

物件目録、井手町財務規則〈省略〉

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